インタビュー後編をお楽しみください♪

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――デビュー以降、順調にお仕事をされている印象があります。
ねこ田 実は、やさぐれていた“魔の2年間”がありまして(笑)。
――どうしてやさぐれていたのですか?
ねこ田 自分の立ち位置がわからなくて悩んでいたというか、これからどうしたらいいのか路頭に迷うような気持ちで、2年ほど過ごしていました。時期でいうと、「神様の腕の中」のコミックス3巻あたりを描いていたころでしょうかね。その頃の作品は読み返すとちょっと複雑な気持ちになります。自分が誰に望まれて描いているのか、わからなくなってしまっていたんですよね。正直、体のいい穴埋めなんじゃないかとか、苦しい思いをしてまで描く意味あるのかとか…やさぐれてたんですよ(笑)。
――その2年間をどうやって脱したのですか?
ねこ田 ひとつには、それまでずっとお世話になっていた出版社さん以外ともお仕事をするようになったことがあると思います。ひとつのところだけで長年やらせていただいているうちに、私の中に閉塞感のようなものが生まれていたのかもしれません。ほかの雑誌に描かせていただくことが気分転換になった、というと語弊があるかもしれませんが、環境が変わったというのは大きいでしょうね。
――当時、いろいろな雑誌からオファーがあったと思うのですが。
ねこ田 はい、ありがたいことに。その中で『drap』で描かせていただくことにしたのですが、『drap』がいちばん自分の作風に合っている気がしたんですよ。読むのだったらどんなBL誌でも好きで読めるのですが、自分の作品が載っていることをイメージしたときに、『drap』がもっともしっくりきたんです。
――“魔の2年間”を過ごされているときに、自分はこういう作家になりたい、というような何かしらのビジョンがありましたか?
ねこ田 いえ、そういう具体的なものはなかったですね。描く場所を変えたからといって、何かが変わるだろうという期待も特にはなかったんです(笑)。実際、それまでと同じようなことで悩んだりはしましたから。でも、自分で行動したことでメンタル的には落ち着きました。とりあえず、やることをやろう、とあらためて思ったんですよ。いいものを描いていたらそのうちなんとかなるだろうし、今苦しいのは、まだ自分の力が足りていないせいなんだろうなって。描く場所を変えたからって、悩みがなくなるわけではないと悟ったというか(笑)。

長編への苦手意識を同人誌で克服

――あらためてお話を聞いていると、無我夢中で突っ走ってきた10年、というのとはちょっと違う気がしますね。
ねこ田 脇目も振らずに走ってきた、というわけではないですね。私は同人誌活動をずっと続けているので、1年を通して仕事だけをしているという実感がないせいもあるかもしれません(笑)。
――同人誌活動をしていなかったら、もっと煮詰まっていたかもしれないと思います?
ねこ田 それは思います。逃げ道がなくなっていたでしょうし。同人誌は読者さんからの反応もダイレクトで届くし、家にずっとひきこもって手紙やメールだけで感想を知るより、実際に生の読者さんに会って話を聞くほうが活力をもらえるときもありますしね。それと、私、あれこれプロデュースをするのが好きなのですが、商業誌だと予算や諸々の都合などで叶わないことがたくさんあるので、本を作るという楽しみも同人誌には感じているんだと思います。
――現在、同人誌はオリジナルジャンルで活動されていますが、パロディジャンルからオリジナルに移られる前に取材でお話をお聞きした際、オリジナルジャンルは読者の方も目利きがたくさんいらっしゃると思うので、自分の同人誌が受け入れられるのか正直不安で怖いと仰っていました。
ねこ田 覚えています(笑)。パロディは、もともとの作品そのものの魅力や人気に支えられているところも大きいと思うのですが、オリジナルだと自分の作家性で手に取ってもらうと思うので、私は、商業誌以上に部数に一喜一憂してしまうんですよ。
――オリジナルで活動を始めたことは、商業誌での仕事にも何か影響がありましたか?
ねこ田 いわれてみればあったと思います。はじめのうちに長編50ページで痛い目に遭ったせいか(笑)、私は長編が苦手で避けまくっていたんですね。そのせいで、どういうふうにプロットを立てて、伏線を張って回収していけばいいのか、長編を描くノウハウがよくわからなかったんですが、いつまでも避けていられないとなったときに、いきなり商業誌で長編の仕事を引き受けて描くのは無理だと思いまして、リハビリのような感じでまずは同人誌で長編を描いてみようと考えたんです。こういう展開を入れたらどうなるか、とか自分の中で実験的なこともやってみたり、それは商業誌に反映されていると思います。最近はオリジナルを描く勝手もわかってきたので、好き放題に描いていますけど(笑)。おかげで以前ほど長編に苦手意識はなくなりました。
――機会があったら、またパロディをやろうとは思いません?
ねこ田 私、二次パロをやり出したら本気になってしまうと思うので、たとえば商業誌の活動を1年休止してパロディ同人誌に専念するとかやりかねないと思うんですよ。商業誌の作品を描いているときに、今同志たちは二次パロの原稿を描いているんだ!と想像したら絶対我慢できないと思って。なので、今のところは二次パロは読み専門だと自分でリミッターをかけている感じです。それを凌駕する萌えがきたらわからないですけど。

BL以外の話が考えられない

――デビューして10年、いちばん自分の中で変わったと思うのはどんなところですか?
ねこ田 わー、難しい質問ですね…。大きくいうと…人になった(笑)。同人誌だけをやっていた頃は、ただの小娘でしたから、そこから仕事を初めて年月が経って…人になったとしかいいようがないです(笑)。
――では、マンガ家・ねこ田米蔵の今後は?
ねこ田 わー、また難しい。…前にも『ぱふ』のインタビューでお話ししたことがあるのですが、デビューして間もない頃に出版社のパーティーで、高河ゆん先生とこだか和麻先生に「デビューはできても、そこから10年生き残るのは大変なことだよ」といっていただいたことがあって、そのときから10年マンガ家として作品を描き続けることが私の目標だったんです。その目標に到達して、今はまだ次の目標が見つけられていない状態で…どうしたものかな、と。長くマンガ家を続けていきたいという気持ちはあるのですが、何か明確な目標がほしいですね。目先のこととしては、苦手な構図をなくすようにしたいし、デッサンなんかもまたきちんと基礎からやり直したいと思っているんですが。
――BL以外の作品を描いてみたいという気持ちはありますか?
ねこ田 それはないです。BL以外の話が考えられない(笑)。BL描いていて楽しいですし、頭がすっかりBL脳なので、ほかのジャンルを描こうという気持ちがないんですよね。
――ではこれからBLで描いてみたいものは?
ねこ田 ホラーやオカルト要素の入ったものを描いてみたいかな。それを絡めて描くのはとても難しいと思うし、そういうニーズが読者さんからあるかどうかは疑問なんですが、機会があったらぜひ描いてみたいですね。あとは、これはやりたいことなんですが、アニメやドラマCDを自分でやりたいように作ってみたいと思っているんですよ。手始めにというわけではありませんが、来年の夏コミあたりにドラマCDを出せたらいいなと思っています。あとは、今リバとオカマ攻にハマッているので、いつか機会があったら描いてみたいと思いますね。オカマ攻は、一種のギャップ萌えなんですよ。オカマのおネエしゃべりがもともと好きなんですが、普段カッコいい人が特定の場所でだけおネエしゃべりになるのがたまらなく萌えで。
――ぜひ読んでみたいです! これからのご活躍も楽しみにしています。
ねこ田 ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。