さあ恋におちたまえ 3 (GUSH COMICS)

 デビューから数年後に訪れた転機…
  インタビュー中編をお楽しみください♪
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伸び悩んだ時期がありました

――ずっとコンスタントにお仕事をされていらっしゃる印象がありますが、デビュー当時と現在とで、ご自身の中で何か大きく変化したことはありますか?
大和 昔はそれこそノリで描いていたというか、好きなものを好きなように描いていましたが、最近は読者さんのことを意識して描くようになりました。みんなはどんなものを読みたいんだろう、どんな話だったら喜んでもらえるだろう、と考えるようになりましたね。
――それはキャリアを重ねて周囲の状況を見るゆとりが生まれたからでしょうか。
大和 逆です。ゆとりではなく伸び悩み、すごく頑張っているつもりだけど自分はここまでしかこられないのかと思うことがいろいろありまして。次の段階に進むためにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、今以上に読者さんに読んでもらえるようにしなくちゃだめだと思ったんです。
――いつ頃のことでしょう。
大和 2003年あたりからですね。同じ時期に出した単行本が、片方は好調だったのにもう片方が売上の面で結果が出せなくて。両方を比較して、どうしてだろうと考えたことがきっかけでした。それで今はどういうタイプのお話が人気なのかなとリサーチしたり、学生ものからリーマンブームに変わってきたなと思ったら、今の時代に乗るにはどんな話なら自分に描けるだろうと考えたり、いろいろチャレンジするようになりました。でも自分の萌えが学生からリーマンに移るまでは数年かかりましたね。
――描いていくことでリーマンに萌えを見出したのですか?
大和 見出すなんて大袈裟なものでもないんですが……。もしかしたら萌えとは少し違うかもしれませんけど、一生懸命描いているうちに、単純に大人のキャラクターが描きやすくなりました。今子持ちものを描いていますけど、子どもも恋愛もどちらも大切なんだというテーマを読者さんに伝えるためには、主人公に何を思わせ、どういう行動をさせればいいんだろうなんて考えていると、「どうしよう、明日テストだよ」といって悩む学生キャラを描いているときより没頭している気がします。もちろん受験や初恋に悩む学生を描くのも楽しいんですけど、自分が年を取った分、大人のキャラを描いているときの方が今の自分の考えに近い気がして、自己満足度が高いです。…といいつつ、最近はまた高校生ものも描いていますが(笑)。一時期は意識して大人ばかり描いていましたが、学生の明るいラブコメディは読者さんにも気軽に読んでもらえると思うし、私も初心に帰る気持ちになれるので、やはりそれも楽しいなと思って描いています。
――15年間でもっともキツかった修羅について聞かせてください。
大和 絵を描くときとお話を作るときとでは、「辛い」の種類がまったく違うんですけど。作画作業でいえば、手が痛かったとか眠いけれど眠る時間がなかったとか。アシスタントさんの手を借りてなんとかしてもらったということはありますけど、とりあえずそこそこのトーンまでは貼れる状態はキープしてきたので、死ぬ思いをするような修羅場になったことはないのかもしれません。最近は徹夜の作業ができなくなってきたので、とんでもない修羅場にならないよう、作画日数の調整は慎重です。お話作りの場合は……新シリーズをはじめるために半年間打ち合わせを重ねてやっと出したプロットについて、翌日「こういうのじゃなくて」といわれたときは、電話口で1時間泣きましたね。
――それはキツイですね……。担当さんが求めている方向性と違ったのですか?
大和 担当さんというよりは雑誌の方向性と違ったみたいです。絵を描くときもネームが進まないときもいろいろ辛いことはあるんですけど、精神的に一番こたえたのはあのときでした。でも最終的にはいろいろな面から作品を考える良い経験になったと思っています。
――大和先生をはじめ、BLは多誌にわたってご活躍されている作家さんが多いジャンルですが、そういった理由でリテイクが出ることはわりとあるものなのでしょうか。
大和 他の作家さんがどうなのかはわからないのですが、わりと自由な方が多いのではないでしょうか。少なくとも私は、雑誌のカラーに合わせるという形で根本的な部分から見直しをしたのは、そのときが初めてでした。もしかしたらいつもは私のほうで多少雑誌のカラーを意識しているから、いわれずに済んでいるのかもしれませんけど。
――多少というと、『BE・BOY GOLD』はアダルトめで『マガジンBE×BOY』ならもう少し年齢を下げてとか。
大和 はい。ただそれも編集部からいわれたわけではなくて、私の勝手なイメージでそうしているだけなんですが。『BE・BOY GOLD』で初めて描くことになったときは、『BE・BOY GOLD』だからアダルトでなくちゃいけないと思って、初めてシリアス系の大人の話を描いたんですよ。
――「くちびるの行方」ですね。
大和 そうです。何もそこまで気張らなくてもっていう(笑)。冒険しすぎた感じはありますが、描いてよかったと思っています。プロットがリテイクになっても、普段と違う作風の物を描いて、はずしてしまったかな?と不安になっても、やってきたことは絶対に経験値になると思っています。

「恥ずかしい」をちょんぎったら、萌えがブワ~

――楽しかった思い出についても聞かせてください。
大和 著作がドラマCDになってアフレコに参加できたり、YAOI-CONにゲストで招かれてアメリカに行ったり、普通に生活をしていたら見られないものをいろいろと見せていただいているので、それはすごくよかったなと思います。ドラマCDは収録現場を見られただけで感激しました。自分が好きだったアニメに出演されていた声優さんにお会いできたことも嬉しかったです。
――濡れ場の収録は恥ずかしくて大変でした!という方と、萌えました~という方といらっしゃいますが、大和先生はいかがでしたか?
大和 私は萌えるほうでした(笑)。初めての収録のときは、恥ずかしさもあってすごくびっくりしたんです。でもあとから、自分が描いた作品をみなさんが一生懸命演じてくださっているのに、恥ずかしいはないだろうと思いまして。「恥ずかしい」をちょんぎったら、萌えがブワ~っと出てきました(笑)。鮮明に覚えているんですけど、初めて出していただいたドラマCDは冒頭からエッチシーンだったんですよ。
――いきなりですか(笑)。
大和 生まれて初めて見る収録が「あっんっ」から入るっていう(笑)。マンガでは違ったんですけど、脚本段階でリクエストはありますか?と聞かれたときに、マンガが朝チュンで終わるような感じだったので、エッチシーンがあったほうがファンの方に喜んでもらえるかなと思って、エッチシーンをちょっと増やしてくださいとお願いしたんです。そしたらなぜか冒頭に(笑)。エッチシーンがあって、昔の思い出をふたりが語るという形になっていました。
――これまで描かれてきた中で、特に印象深い作品を挙げるとしたら何ですか?
大和 別枠なのは「ちんつぶ」ですね。発表の場は商業誌から同人誌に変わりましたけど、一番長く描き続けている作品なので。あとは「さあ恋におちたまえ」。これは売上という意味で一番結果を出せたコミックスなんです。1巻はまだ何も考えずにノリで描いていた時期で、2巻が悩みはじめた頃、3巻は読者さんを意識して苦しんで描いた覚えがあります。だから思い出深いですし、頑張って一生懸命描いたぶん、私は3巻が一番好きなんです。
――同時期に複数のシリーズを描かれることも多いですが、原稿へ向かうときにチャンネルの切り替えに苦労されることはありますか?
大和 切り替えるときはもうムリヤリ切り替えます。多少は慣れてもやっぱり簡単にはいかないので、今日からプロットをやらないと間に合わないぞっていうときに、ノートやパソコンの前に座って切り替えるんです。1日粘っても1行しか出てこないこともありますが、ずーっと悩んでいるうちに自然に切り替わるんですよね。何をきかっけに出てくるかわからないので、苦しむときは苦しみますが。ポンと出てくることもあれば、むりやり絞り出すこともありますし、なんとなくホワーっと浮かんでいることもあって。今やっている「最恐教師~教師もいろいろあるわけで~」は芳村という新キャラが出てきましたけど、あれは前のシリーズで井吹というキャラを作ったときから頭にあったキャラなので、絞り出したというよりは、ずっと考えていたあのキャラ出しちゃだめかな~と思って担当さんに確認しました。
――「教師も色々あるわけで」で井吹を出したときに「最恐教師」のお話も思い浮かんでいたのですか?
大和 いえ、そこまではありませんでした。あったのは井吹にまつわる設定的なイメージですね。井吹はもううまくいったカップルを引っ掻き回すために作ったキャラクターだったので、とりあえずと思って出したのですが、このキャラクターについてどうけりをつけるかと考えたときに、元ヤンだったらどうかなと思い浮かびまして。だけどOKになるかはわからなかったので、頭の中に残しておいたんです。で、最終的に担当さんからOKをもらってそういうことになったのですが、元ヤン設定が思い浮かんだときには、井吹が教師になったきっかけについてもうっすら浮かんでいて。それが今描いている話に繋がっているという感じです。
――かなり長い間頭の中にイメージがあったのですね。
大和 そうですね。そういう話が描けたときはすっきりします。同じような感じで脇役から主役になったのが、「デキる男の育て方」に出てきた山咲です。あのキャラのこともずっと頭の隅で考え続けていたので、続編「無口な恋の伝え方」を描くことができたときは、本当に満足感でいっぱいでした。BLはスピンオフ作品が多いですけど、そうなるのもわかる気がするんです。ひとつの世界観を長続きさせることができると描いていて楽しいですし、読者さんにも脇役が気になるっておっしゃる方は多いので。
(後編につづく)